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失われた『哲学の木』。終わらない観光客のマナー違反と地主の苦悩

1070viewvario2016/02/27

失われた『哲学の木』。終わらない観光客のマナー違反と地主の苦悩

北海道の美瑛町にどういうわけか1本だけ離れてそびえたつポプラの木がありました。それは地面の傾斜と反対向きに伸びているユニークな姿から、「哲学の木」と名付けられました。一躍美瑛町の観光スポットとなりましたが、街の人々の期待とは裏腹にそれは結果として悪質な観光客の誘発に繋がり、地主たちの苦悩の末、2016年2月24日に切り倒されました。

一連の出来事について私たちの知ることは少ないかもしれません。ローカルなニュースは時として瞬く間に誤解や偏見に満ちた情報へと変貌してしまうため、哲学の木に深くかかわり、切り倒される瞬間に立ち会ったカメラマン「中西敏貴」さんのブログ記事を以下に引用します。

ネットで情報がいち早く流れてしまうこの頃。間違った情報や誤解された情報が流れてしまう前に、この記事をアップします。
ちなみに、私中西は、地主さんから指名を受け、すべての顛末を記録させていただきました。勝手にこの記事を書いているわけではありませんので、ご了承ください。

私中西が美瑛町で一番好きな木「哲学の木」が本日倒されました。

私自身、地主さんとは友達であるので、ずっと以前から彼の苦悩を見て、相談に乗ってきました。時には一緒に見張りもやったこともあります。昨年来からネッ ト上では色々な情報が流されていましたが、直接彼に会い、悩みを聞いてきたのはおそらく私だけだと思います。そんな彼との信頼関係があったからこそ、本日 の大切な日に、写真家として唯一立ち会わせていただけました。

まず、哲学の木は切られたのではありません。
イタリアポプラである哲学の木は寿命を全うしようとしていました。かなり弱っていたことは間違いありません。ご存知のようにかなり大きな木で、この木が農 作物のある時期に倒れたりすると大変な被害になることは明白です。そんなこともあり、地主さんは昨年から決断していました。
もちろん、その決断を後押しした理由に「観光客やカメラマンのマナーの悪さ」があることは事実です。農作業中の姿を撮る、畑に入る、雪の中で遊ぶ。そのど の行為も彼らは望んでいませんでした。あの木が今日まで生きてこれたのは、「それでも美瑛まで来てくれるんだから、楽しみを奪っちゃかわいそうだな」とい う農家の方のご好意があったからです。
しかし、近年はその我慢の限界を超えていました。そこで彼らは昨年から撮影禁止という決断をしたのです。それでも畑への侵入は後を絶たない。彼らにとって、木は農作業の邪魔な存在となってしまったのです。
そして、今日、重機によって倒されました。弱っていたため、少しの力で倒れてしまいました。あまりにあっけなく、一瞬の出来事でした。

この顛末を見ていたのは、私以外に地主さん他関係者のみ。わずかな人間に見守られながらその命を終えました。

切られる瞬間に立ち会えた、といった情報もすでにあるようですが、だれもいませんでした。写真を撮っているのも私だけです。今後、様々な情報が出てくるでしょうが、事実を知っているのは今日、そこにいた人間だけです。どうか、間違った情報を広げないでください。

言うまでもなく農家は農業で生計を立てています。その彼らが決断したのですから、我々がとやかく言えた立場ではありません。倒れる瞬間、涙が止まりませんでした。しかし、一番悲しいのは彼らの筈です。どうか、そっとしておいてあげて欲しいのです。

今回の出来事が、美瑛のみならず観光スポットでのマナー向上につながる大きな一歩になれば、きっと哲学の木も成仏できることでしょうし、そう願いたいものです。

写真は、地主さんの許可をもらって撮影した昨日の満月。
最後の満月でした。さようなら「哲学の木」。

出典 Pieces of time

木の寿命であったのは確かですが、しかし切り倒しにつながるまでの一連の出来事が、周辺に住む人々を傷つけ続けてきた事実を私たちは見逃すわけにはいきません。このようなニュースを目にするたびに、いかに私たち人間が利己的であり、自分の欲求のためなら誰が・何がどうなろうと無関心になってしまう生き物であることを思い知らされ、とても悲しい気持ちになります。

今となっては、私たちが後世に残せるのは、かつて『哲学の木』がそこにあり、そして失われてしまったという事実しかありません。

せめてその事実を、私たちは伝えていく義務があるのだと思います。

写真の出典はすべて中西敏貴さんのブログ【Pieces of time】より。

 

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